フィギュアスケート音楽編集
ボーカルカット(歌声の除去)について
フィギュアスケートの音楽もは、2014-15シーズンよりボーカル入り楽曲の使用が認められるようになりましたが、
「歌声だけを取り除いてお気に入りの音楽を使いたい!」という場合もあるかと思います。
結論から申しますと、残念ながらお勧め出来ません。
理論的・技術的にはそれは可能で、「ボーカルをカットしてカラオケを作れます」と謳うソフトウェアも多数存在しますが、 声だけをきれいに取り除くには条件があります。
- * 声が音場の中央にあり、リバーブなどがかかっていないこと。
- * 音場の中央に声だけがあり、他の楽器の音は完全に左右に振り分けられていること。
このような音源は、まず存在しません。
▼ボーカルカットの原理をご説明します
音は、縦軸が音の大きさを、横軸が時間を表し、単位時間あたりの波の数で音程が変わります。
波が密集していれば高音、ゆったりしていれば低音です。
単純な波形図を用意してみました。
(※拡大図です)
全く同じ波形を重ねると音は大きくなりますが、上下を反転(位相反転=インバート)させた波形を重ねると、
互いに打ち消しあって音は消えてしまいます。
この原理を応用して、高速道路の騒音を低減させる研究が行われ、一部で実用化もされているようです。
ステレオ音源において、左(L)チャネルと右(R)チャネルに全く同じ波形の音が録音されている場合、その音は中央から聴こえます。
左にピアノ、右にストリングスを配置したバックミュージックを用意してみました。
これに、先ほどの音をボーカルに見立ててミックスしてみましょう。
ここで、左(L)には右(R)を反転した音を、右(R)には左(L)を反転した音を、それぞれミックスすると・・・
左のピアノと右のストリングスは全く別の波形ですから、打ち消し合わずに混ざりますが、 中央に配置された音(ボーカル)は左右が同じ波形なので、反転させた音をミックスすることで打ち消し合い、 右も左も消えてしまいます。これがボーカルカットの原理です。
このようにして出来た波形は、一見すると左右同じに見えますが、拡大してよく見ると、左と右とでは 波の形が上下逆になっていることが分かります。
そのため少し立体的な音に聴こえますが、どちらかを反転させると・・・
左右が全く同じ波形になり、ピアノもストリングスも中央から聞こえる平坦な音になります。(モノラル化)
近年はAI技術の発達により、ボーカル・ドラム・ベース・ピアノ等の主要な構成音を分離できるようになりましたが、まだまだ不完全で音質の劣化は避けられません。しかし、極狭い範囲で不要な音を消去し、音を重ねることで綺麗に繋ぐ(ごまかす)ような利用方法はありますので、 ご希望があればご相談下さい。